「技術・人文知識・国際業務ビザとは?」「専門職のための在留資格」

外国人が日本で働くためには、職種や働き方に応じた在留資格(ビザ)が必要です。その中でも「技術・人文知識・国際業務ビザ(通称:技人国)」は、最も基本的でありながら、理解が難しい在留資格のひとつ。
この記事では、なぜこの制度が存在するのか、そしてどんな人・仕事が対象になるのかを「該当性・適合性・相当性」という3つの審査ポイントからわかりやすく整理します。
1. 制度の出発点 ― なぜこの資格があるのか
日本では、すべての外国人を自由に働かせるわけではありません。受け入れるのは“専門性をもつ人材”です。この線引きを制度的に明確にするために設けられたのが、「技術・人文知識・国際業務」ビザです。
2. 技人国ビザの骨格 ― 3つの審査ステップ
技人国ビザは、「誰が」「どんな仕事で」「どのように働くか」を総合的に審査します。
| ステップ | 審査内容 | 審査対象 |
|---|---|---|
| ① 該当性 | 活動内容が専門的業務にあたるか | 雇用先・職務内容 |
| ② 適合性 | 申請人がその業務に必要な知識・経験をもつか | 学歴・実務経験 |
| ③ 相当性 | 事業や報酬が社会的に合理的か | 雇用契約・報酬・安定性 |
3. 該当性 ― どんな仕事が対象になるのか
申請人が行う活動が、次の3分類のいずれかに当てはまる必要があります。
| 分類 | 内容 | 代表職種・分野 |
|---|---|---|
| 技術 | 理系の専門知識を活かす業務 | ITエンジニア、設計、建築、研究開発など |
| 人文知識 | 文系の専門知識を活かす業務 | 経営、マーケティング、教育、法律、経済など |
| 国際業務 | 外国人ならではの感性を活かす業務 | 通訳、翻訳、海外営業、デザイン、広報など |
また、日本の法人・団体との契約であること(個人事業主との契約は不可)、契約が継続的かつ適法であることが条件です。
4. 適合性 ― 「人」の専門性をどう判断するか
在留資格は「仕事に合った能力を持っているか」で決まります。以下のいずれかに該当していれば、原則として条件を満たします。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 大学卒業 | 専攻と業務が関連している(理系・文系問わず) |
| 専修学校卒 | 「専門士」「高度専門士」の称号+関連科目修了 |
| 実務経験 | 関連分野で10年以上の経験 |
| 特例 | IT関連資格保持者(IT告示)などは学歴を要しない |
5. 相当性 ― 社会的に妥当であること
許可されるためには、次の条件も満たす必要があります。
- 報酬が日本人と同等以上であること
- 雇用主の事業が安定・継続していること
- 提出資料に信頼性・整合性があること
つまり、「働く人」だけでなく、「雇う企業」も選ばれます。
6. 技人国ビザの基本スキームまとめ
技術・人文知識・国際業務ビザの構造
① 該当性 → 専門的な業務か?
② 適合性 → 専門知識・経験があるか?
③ 相当性 → 社会的に妥当・安定しているか?
この3条件が揃って「専門人材」としての在留が認められます。
まとめ
「技術・人文知識・国際業務ビザ」は、外国人の就労の基本であり、制度の趣旨を理解すれば「誰が・どんな条件で・なぜ働けるのか」が自然に見えてきます。
単純労働ではなく“知的・専門的業務”であること、申請人と雇用主の両方が審査されること、3つの審査要素のバランスが重要——これが、外国人雇用の第一歩を理解する鍵です。
